2008年 06月 16日
富士山 |
昨日茨城県つくば市で漢方の講演会をしてきました。
茨城県出身の自分としては、故郷での講演会であり、
普段より熱のこもったお話をしてきました。
故郷とはいっても・・つくば市に来たのは・・
科学博覧会以来ですから・・もう数十年ぶりになります。
秋葉原からつくばエキスプレスに乗り・・
終点つくばまでは・・わずか40分!
とっても便利になりました!
しかもあまりに都会的になっているのに・・さらにびっくり!
帰りは羽田から飛行機で富山へ。
窓からは・・富士山がとっても綺麗に見えて・・感激!!
綿を敷きつめたような雲のなかから・・にょっきり頭を出した富士山!
頂上にはまだ雪が残っていました。
富士山というと・・夏目漱石の「三四郎」を思い出します。
長くなりますが・・
「三四郎」のなかで、私が何度も読み返している一節を紹介します。
「どうも西洋人は美しいですね」と言った。
三四郎はべつだんの答えも出ないのでただはあと受けて笑っていた。すると髭の男は、
「お互い哀れだなあ」と言い出した。「こんな顔をして、こんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね。もっとも建物を見ても、庭園を見ても、いずれも顔相応のところだが、あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるからご覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまあにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。
「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
「滅びるね」と言った。熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いされる。三四郎は頭の中のどこのすみにもこういう思想を入れる余裕はないような空気のうちで生長した。だからことによると自分の年の若いのに乗じて、ひとを愚弄するのではなかろうかとも考えた。男は例のごとく、にやにや笑っている。そのくせ言葉つきはどこまでもおちついている。どうも見当がつかないから、相手になるのをやめて黙ってしまった。すると男が、こう言った。
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より・・・」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」
この言葉を聞いた時、三四郎は真実に熊本を出たような心持がした。同時に熊本にいた時の自分は非常に卑怯であったと悟った。
その晩三四郎は東京に着いた。髭の男は別れる時まで名前を明かさなかった。三四郎は東京へ着きさえすれば、このくらいの男は到るところにいるものと信じて、べつに姓名を尋ねようともしなかった。
茨城県出身の自分としては、故郷での講演会であり、
普段より熱のこもったお話をしてきました。
故郷とはいっても・・つくば市に来たのは・・
科学博覧会以来ですから・・もう数十年ぶりになります。
秋葉原からつくばエキスプレスに乗り・・
終点つくばまでは・・わずか40分!
とっても便利になりました!
しかもあまりに都会的になっているのに・・さらにびっくり!
帰りは羽田から飛行機で富山へ。
窓からは・・富士山がとっても綺麗に見えて・・感激!!
綿を敷きつめたような雲のなかから・・にょっきり頭を出した富士山!
頂上にはまだ雪が残っていました。
富士山というと・・夏目漱石の「三四郎」を思い出します。
長くなりますが・・
「三四郎」のなかで、私が何度も読み返している一節を紹介します。
「どうも西洋人は美しいですね」と言った。
三四郎はべつだんの答えも出ないのでただはあと受けて笑っていた。すると髭の男は、
「お互い哀れだなあ」と言い出した。「こんな顔をして、こんなに弱っていては、いくら日露戦争に勝って、一等国になってもだめですね。もっとも建物を見ても、庭園を見ても、いずれも顔相応のところだが、あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるからご覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまあにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。
「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
「滅びるね」と言った。熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いされる。三四郎は頭の中のどこのすみにもこういう思想を入れる余裕はないような空気のうちで生長した。だからことによると自分の年の若いのに乗じて、ひとを愚弄するのではなかろうかとも考えた。男は例のごとく、にやにや笑っている。そのくせ言葉つきはどこまでもおちついている。どうも見当がつかないから、相手になるのをやめて黙ってしまった。すると男が、こう言った。
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より・・・」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」
この言葉を聞いた時、三四郎は真実に熊本を出たような心持がした。同時に熊本にいた時の自分は非常に卑怯であったと悟った。
その晩三四郎は東京に着いた。髭の男は別れる時まで名前を明かさなかった。三四郎は東京へ着きさえすれば、このくらいの男は到るところにいるものと信じて、べつに姓名を尋ねようともしなかった。
by tanikawaiin
| 2008-06-16 02:09
| 雑記