2009年 12月 08日
日曜ひろば:漢方薬の保険適用除外に反対 |
12月6日の毎日新聞に、私のインタビュー記事が掲載されました。
以下転載します。
◇未病で食い止め健康維持 「たすきを次につなげたい」--谷川聖明さん(46)
政府の事業仕分けで、漢方薬を含む市販品類似薬を保険適用の対象外とする案が出され、全国の漢方研究者、医師らが反発を強めている。東洋医学会は1日、27万人以上の反対署名を国に提出。江戸時代から製薬、配置薬業が続き、現在も漢方薬研究が盛んな「薬の富山」でも、関係者が危機感を募らせている。国立大付属病院として初の漢方専門外来を設けた富山医薬大(現・富山大)の出身で、3年前に富山市内で漢方専門医院を開業した谷川聖明さん(46)が漢方医療や保険適用の重要性を語る。【青山郁子】
◆漢方は自然治癒力を高めるもの。結局はそれが医療費抑制にもつながると訴える。
今そこにあるばい菌をたたくという西洋医学と違い、東洋医学は体自体に治す力を付け、大きな病気になる前の「未病」(健康と病気の間)の段階で食い止め健康を維持するのが最大の目的。長い目で見れば医療費の抑制にもつながっているのです。例えば今年、家中が新型インフルエンザにかかっても1人だけ漢方を服用していて罹患(りかん)しなかった女性患者もいました。
またお年寄りは体中にさまざまな疾患を抱えていることが多く、いろんな診療科でいろんな薬を処方されます。ところが漢方の概念で薬を整理すると、薬の量が半分になるケースもあり、医療経済的なメリットもあります。
◆保険適用を除外しようとする理由は「単価比較をすれば市販品の方が安くなる」などというものだった。
よく漢方のメリットとして「副作用が少ない」点が挙げられますが、決してそうではありません。薬は薬。専門医がちゃんと見立てて適切に処方することで効果が高まるのです。専門医の管理のもとで服用することで、副作用を最小限に食い止めることができるのです。特に東洋医学では、一人一人の体質を診断し、患者にぴったり合う薬を選択するので、病名が同じでも処方薬は全く違います。
また市販薬と医療用漢方では薬の成分量が根本的に違うので「漢方はドラッグストアで買えばいい」という発想は東洋医学的には間違っているのです。
◆現代医療に欠けているのは癒やしや優しさ。それを東洋医学は持っている。
私の医院では患者の70%が女性。特に漢方は西洋薬だけでは対応できない心や体の不調、例えば更年期や冷え性、虚弱体質などに有効とされます。女性は検査でどこにも異常がなくても「不調」を訴えることが多い。そんな場合、必ず家庭や仕事など社会的背景があるものなのですが、そんな悩みを聞いてあげるのも漢方医の役目なのです。
現在、初診は2カ月待ち。遠くは名古屋市から通う人もいる。それほど患者は漢方を望んでいます。現行の医療制度では保険診療と保険外診療の併用は原則禁止のため、万一保険適用を除外されると、漢方を処方できなくなります。そうなると患者は行く病院がなくなってしまいます。
◆100年200年後も残る医院でありたい。
今回の仕分け結果は、漢方についての理解不足が原因と考えます。漢方をもっと社会に根付かせるためには、人材育成、資源の有効活用などが必要です。私は来年2月から京都大医学部で和漢についての講義を担当します。今自分のやっていることが社会から正しいと評価されるには、漢方のたすきを次につなぐことが最も重要。だから自分の知識はすべて包み隠さず教えていくつもり。体の中の変化に耳を傾け治療していくという何千年も受け継がれてきた漢方の知を、ずっと残していくのが私たちの果たすべき役割だと思っています。
以下転載します。
◇未病で食い止め健康維持 「たすきを次につなげたい」--谷川聖明さん(46)
政府の事業仕分けで、漢方薬を含む市販品類似薬を保険適用の対象外とする案が出され、全国の漢方研究者、医師らが反発を強めている。東洋医学会は1日、27万人以上の反対署名を国に提出。江戸時代から製薬、配置薬業が続き、現在も漢方薬研究が盛んな「薬の富山」でも、関係者が危機感を募らせている。国立大付属病院として初の漢方専門外来を設けた富山医薬大(現・富山大)の出身で、3年前に富山市内で漢方専門医院を開業した谷川聖明さん(46)が漢方医療や保険適用の重要性を語る。【青山郁子】
◆漢方は自然治癒力を高めるもの。結局はそれが医療費抑制にもつながると訴える。
今そこにあるばい菌をたたくという西洋医学と違い、東洋医学は体自体に治す力を付け、大きな病気になる前の「未病」(健康と病気の間)の段階で食い止め健康を維持するのが最大の目的。長い目で見れば医療費の抑制にもつながっているのです。例えば今年、家中が新型インフルエンザにかかっても1人だけ漢方を服用していて罹患(りかん)しなかった女性患者もいました。
またお年寄りは体中にさまざまな疾患を抱えていることが多く、いろんな診療科でいろんな薬を処方されます。ところが漢方の概念で薬を整理すると、薬の量が半分になるケースもあり、医療経済的なメリットもあります。
◆保険適用を除外しようとする理由は「単価比較をすれば市販品の方が安くなる」などというものだった。
よく漢方のメリットとして「副作用が少ない」点が挙げられますが、決してそうではありません。薬は薬。専門医がちゃんと見立てて適切に処方することで効果が高まるのです。専門医の管理のもとで服用することで、副作用を最小限に食い止めることができるのです。特に東洋医学では、一人一人の体質を診断し、患者にぴったり合う薬を選択するので、病名が同じでも処方薬は全く違います。
また市販薬と医療用漢方では薬の成分量が根本的に違うので「漢方はドラッグストアで買えばいい」という発想は東洋医学的には間違っているのです。
◆現代医療に欠けているのは癒やしや優しさ。それを東洋医学は持っている。
私の医院では患者の70%が女性。特に漢方は西洋薬だけでは対応できない心や体の不調、例えば更年期や冷え性、虚弱体質などに有効とされます。女性は検査でどこにも異常がなくても「不調」を訴えることが多い。そんな場合、必ず家庭や仕事など社会的背景があるものなのですが、そんな悩みを聞いてあげるのも漢方医の役目なのです。
現在、初診は2カ月待ち。遠くは名古屋市から通う人もいる。それほど患者は漢方を望んでいます。現行の医療制度では保険診療と保険外診療の併用は原則禁止のため、万一保険適用を除外されると、漢方を処方できなくなります。そうなると患者は行く病院がなくなってしまいます。
◆100年200年後も残る医院でありたい。
今回の仕分け結果は、漢方についての理解不足が原因と考えます。漢方をもっと社会に根付かせるためには、人材育成、資源の有効活用などが必要です。私は来年2月から京都大医学部で和漢についての講義を担当します。今自分のやっていることが社会から正しいと評価されるには、漢方のたすきを次につなぐことが最も重要。だから自分の知識はすべて包み隠さず教えていくつもり。体の中の変化に耳を傾け治療していくという何千年も受け継がれてきた漢方の知を、ずっと残していくのが私たちの果たすべき役割だと思っています。
by tanikawaiin
| 2009-12-08 21:29
| 毎日新聞記事